焦がし焼きもち&牛乳

本の感想とか

不滅のあなたへ

 

  不死の主人公が様々な動物や人間になり変わり、なり変わった対象ごとで独特の体験をする。死んだ動物や人間でないとなりかわれない。また体に刺さった槍などは体から出すことができる。

 「聲の形」を描いた作者であり、細かい心境を上手に表情に出させてます。基本的に、誰か(動物だったり人間だったり)が死ぬエピソードで物語が一つ完結し、新しくなりかわれる対象が増え、新しい旅先で同様に誰かが死ぬ、を繰り返す連作の形式です。

 物語の主題の一つは、生きるとは何か、という問いかけではないでしょうか。

 主人公は体がちぎれようが、腐ろうが死なない言わば完全な存在です。そんな存在とは対照的に主人公が旅先で会う者たちはいつも境地に立たされ理不尽な選択を迫られながら懸命に生き、そして最後は死んでしまいます。不滅の存在をそばに添えることで、未練を残し死にゆく者の物悲しさや一瞬を懸命に生きるその美しさが引き立ちます。

 私はこの作品を通し、生きる事の過酷さを認めながらもそれに立ち向かうことは美しいことであり、だからせめて最期まで腐らずに生を全うしませんか、という、暗く、しかし、しなやかに強く在ろうと言うエールを感じました。